忘れ物はないね?:2012-09-09

『忘却』とは、忘れ去ることである。
人は『忘れる』という能力がなければ、絶望で生きていけないそうだ。
しかし、私にはそれらの忘れ物が大変愛おしく、また、そういった忘却の 中に存在する、私がかつて此処に存在していた証拠のかけらのようなものが、
どこか遠いところへでも散らばって、ある日ひょっと誰かのしゃっくりを止めたり
犬に遠ぼえをさせたりできないか、などと思うのである。
だから、私はこの日記を書くことにする。
この日記はその日にあった笑えることや、怒れることや、
その日に思い出した面白いことや悲しいことを記すためにある。どんどん忘れていくTwitterはコチラ

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2012年09月09日(日)『蟻と梨』日記 11 ◆かじやんの巻◆

かじやんこと、梶田真二くんは、コーヒー屋さんの店主です。
名古屋にある「コーヒーカジタ」という、それはすてきな、コーヒーとお菓子のお店をやっています。
コーヒーカジタはそのお店のすばらしさで、開店以来、大人気のお店ですが、かじやんは、そのお店を開く前はベーシストでした。
かれこれ20年以上も前からの友人で、その頃から名古屋でザボンドボンというインストバンドをいっしょにやっていたのです。
今回もコルネットで参加してくれている中野明美ちゃんもザボンドボンのメンバーです。
当時、かじやんのお家のお庭にあった物置小屋が練習場所であった我々ザボンドボンは、それはそれはまじめにユルい音楽を研究して作るバンドでしたが、一方でまじめに楽しみを追求する仲間でもあったので、いつも練習を終えると、河原へ行ってカレーを作ったり、でたらめのナンを焼いたり、ただ、外で鍋をしたり、練習帰りにそのまま郡上八幡へ徹夜の盆踊りに行ったりしては過ごしていました。
そういう、ナンを焼いたり、郡上で踊りを覚えたりしたことが曲になったりして、メトロトロトンレコードのオムニバスに入れていただいたことが、今の私につながっています。
前置きが長くなりました。
それからみなそれぞれに大人になり、かじやんはコーヒー道に進み、現在のコーヒーカジタがあるのですが、時々お店へ立ち寄ってカウンター越しに話していると、ある時ベースをまた買ったという。
では、せっかくだからそれを演奏しよう、と誘い、かじやんにとっては10年ぐらいのブランクを経て、いきなりレコーディング、ということになりました。
前々から、カジタの曲を作りたくはあったのです。
果たして、デモを渡してから3ヶ月、お店やイベントで日々忙しいかじやんは、東京まで録音にかけつけてくれました。
忙しい合間を縫って、ずいぶんと練習をしてくれたそうです。
今回のアルバムは、河瀬さんのベースはすべてコントラバスです。
でも、この「コーヒーカジタで」だけ、かじやんの登場により、かじやんが買ったエレキベースになりました。
なんだかロマンを追いかけているふうに見えてしまうかもしれませんし、変てこかもしれませんが、それもまた楽しいものです。

この曲ではちゃんとコーヒーカジタへの行き方も歌っていますから、ぜひ歌いながらコーヒーカジタを訪ねてみてほしいです。

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[link:1285] 2012年09月11日(火) 00:00


2012年09月09日(日)『蟻と梨』日記 10 ◆ブラウンノーズ巻◆

はっきりいう。何度でもいう。このひとたちは天才だ。
例によって、「天才」という言葉を使うのはまったく好きではありません。
なのだけれど、そういうふうにいう他にないのだから仕方がないのです。

「アメリカの太ったおじさんがバケツリレーをしている感じで」
「ジャングルの人」
「ここでいろんなおばけがわらわら出て来て一斉にいなくなる」
などの注文を、次から次へとなんの迷いもなく「あ、はい、わかりました」っていう。
私としては、言っておきながら、「わかったんかい!」と、心の中で笑いながら軽くツッコむのですが、直後、それがすぐに形になって出て来てしまうので、「あ、やっぱりわかったんだね!」と大笑いしてしまうのです。
その心持ちというか、想像を超えるなにかが次々と飛び出してくる快感は、ちょっと口では言い表せません。
音符の名前はすぐにわからなくても、私の出した音を、バンジョーでもマンドリンでもすぐ弾いたり歌ったりできてしまう。
そして、どんな素材だろうが、場所だろうが、人の描いた続きだろうがなんだろうが、そこにびゃーっと引く一筆で、もうブラウンノーズの絵にしてしまうのです。
なんとおそろしい二人組か。
私は、そんなおそろしい二人組と、またどうしても「一緒に」やりたかったのでした。

前回のおせっかいカレンダーでは2曲コーラスをお願いしたのだけれど、今回はどうしても、楽器ごとブラウンノーズ、というのもやりたくて、曲は作った時から決めていました。
決めていたけれど、あえてそれをこういうふうに、とは言わず、まずは好きに料理してもらいました。
その結果、期待を遥かに上回る、徹底的にブラウンノーズ節が炸裂したデモが送られてきたのです。
それはすでに素晴らしく変てこでめくるめくブラウンノーズの世界ができあがっていて、もうどこからも壊すことができない、という完成品であったため、録音当日はとにかく、それを「多重録音で作り込む世界」ではなくて、「なるべくライヴでやろうと思えばできるぐらいのスタイルで」再現することを考えました。
私がぼんやり描いていたアレンジの骨組みとブラウンノーズに前もってある程度考えてきてもらったデモの設計図をもとに、「あとはあんまりなんにも考えないでとりあえずやってみますか」という方式。
録音中にこんなに笑ったことってあっただろうか、というほど、録っている間じゅう笑いがこみ上げてきてしかたがありませんでした。
曲数は少ないのですが、その心地よいユルさと、狂気の共存する絶妙の世界が、その空気感ごと、切り取れたと思います。
エッセンス、とかそういうことでは全くない。もう、居るだけで世界の立ち位置が変わります。
見えていてもいなくても、確実にそこにあるっていうあの存在感はほんとにすごいです。

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[link:1284] 2012年09月09日(日) 13:38


2012年09月09日(日)『蟻と梨』日記 9 ◆るっちゃんの巻◆

るっちゃんは、本当にアコーディオンを楽しく弾く人です。
楽しくも悲しくもつらくもあるでしょうが、ひっくるめて、アコーディオンをこのうえなく楽しく弾く人だと思います。
いえ、弾く、というより、るっちゃん自身がアコーディオンなんじゃないか?と思うほどです。
アレンジしたフレーズを弾いてくれている、というより、曲の中にるっちゃんが飛び込んできらきらと泳いでいるような感じ。

そんなるっちゃんは、いつもたいていVICTORIAというつややかで輝いた音色のアコーディオンを弾いていて、今回ももちろんそれを弾いてもらったのですが、それとは別に、私が昔古道具屋さんで買った中国製のPARROTという名前のついたチープなアコーディオンも演奏してもらいました。
VICTORIAとはまったく違う、素朴で実直で不器用な感じの音。でも、なんとも捨てがたい味わいのある大衆食堂のような音のする、やけにでかいアコーディオンを、るっちゃんはそれはそれは楽しそうに弾いてくれました。

ピアノも異国の古いピアノとニッポンのお家のアップライト両方をとりまぜましたが、アコーディオンも方やイタリアの名器、一方は中国製の大衆器(?)。鳴る音で景色も違ってすごく面白かった。

でも、イタリアのでも中国のでも、るっちゃんはやっぱりアコーディオンそのものです。

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[link:1283] 2012年09月09日(日) 04:19

2003年6月16日までの日記


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